【バッハ】小フーガ BWV578 DTMと分析 -2-

2020年11月3日音楽系クラシック

前回からの続きです。

【小フーガト短調 BWV578】

 

『DTM』

DTMの詳しい説明は前回のブログをどうぞ
オルガンのソロにはしていません。

 

『フーガの構造と対位法』

フーガは
メインとなる旋律(主題)と、
そして嬉遊曲、追迫曲と呼ばれる”繋ぎ”のフレーズから構成されています。

嬉遊曲
主題に対して楽しい、気休め的な意味合いをもちます。

追迫曲
主題に対して、最後の盛り上りを演出します。

 

小フーガト短調(Gマイナー)の主題(メイン旋律)は、誰でも一度は聞いたことのあるのでは?というほど有名な旋律です。

主題は5小節です。
5小節目のソの二分音符で終了です。
二分音符に被さっている16分音符群は、転調される主題への繋ぎです。
6小節目からAメジャーに転調した主題が出てきます。

ではこの曲の大まかな構造を見てみましょう

見難くてすみません。
記述されていない小節は、省略させていただいています。
たとえば、冒頭、小節1、5とありますが、これは1~5小節ということです。
そして6小節目からS2が始まると捉えてください。

25小節目は謎です。
主題の1小節目が出てきます。
しかし、すぐ次のS5に引き継がれます。

Sは主題です。
調は違いますが計9回でてきます。

主題と主題の間に嬉遊曲が出てきます。
第二嬉遊曲以降は、主題の最後の二拍に被さって出てきます。

58小節目から、追迫曲。
そして最後は主題で終わります。

嬉遊曲、追迫曲、そして主題が演奏されている裏でも、各声部が色々なメロディーで対位しています。
複雑で、しかも手慣れた感じがあります。

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『コード進行』

今度はコード(和音)を見てみます。

対位するフレーズをわかりやすくするために、4~5声の分解しています。
DTMのYoutube動画に準じています。

私が耳コピしたので不正確ですが、だいたいこんなコード進行だと思われます。
(Em7-5は、ここではミ、ソ、シ♭の3音の和音と捉えてください。)

ほとんどがGmとDの繰り返しです。
単純なコード進行は対位法の自由度を上げる。
以前「ブライアン・ウィルソンの対位法」でも出てきたルールです。
その通りの、ごくシンプルなものです。

ところが、たとえば22小節目から合計3小節の嬉遊曲です。

以下のようになっています。

一転して、Jpopでも使えそうなコード進行です。
24小節目なんか、とてもオシャレです。

このモダンなコード進行の中で、3つの異なるリズムのフレーズが対位しています。
こうなると主題より、嬉遊部のほうが聞きどころ、と言えなくもありません。

さらに追迫部です。

55小節目からの嬉遊部を引き継いで、58小節目から始まります。

まずは嬉遊曲6です。

先程の嬉遊曲と似た感じです。
調性はGマイナーです。
3小節です。
コード進行は微妙に違います。
5度下げた主題をうけて始まります。

この3小節の後、Gm Dの繰り返しから、5小節と二拍の追迫部へ入ります。
赤いカッコでくくった部分です。


上昇するベースラインが盛り上がりと緊張感を高めます。

最後のGm Dから最後の主題となります。

フーガとは、転調する主題の掛け合いが聞きどころ、と思っていました。
ですが、こうして分解、耳コピしてみると、嬉遊部、追迫部の重要性がわかります。

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【作曲方法】

ではこのフーガの傑作はどうやって作曲されたのでしょう?

分解、耳コピして、出てきた私の疑問があります。

主題が5小節、嬉遊曲が3小節や、2小節と二拍、と中途半端な小節数なのはなぜ?

ということです。
私だったら、主題の4小節目はカットしちゃいます。
ただ主題が4小節だと、嬉遊部と追迫部とのバランスが崩れそうな気もします。

つまりバッハは主題、嬉遊部、追迫部のバランスを最重要視するところから、このフーガを仕上げたのではないでしょうか。

以下は、あくまでも私の妄想ですw

    • ある日、散歩していたバッハ(もしくはオルガンを弾いていた)。
    • 『ららら~ら、ららららららら~♪』の2小節の部分が突然、脳裏に浮かびます。

「これはイケるメロディーだ!!」と思ったバッハはコードを当てはめます。
するとGm、Dの繰り返しから始まることになります。

「これは対位法に好都合!!」と喜ぶバッハ青年
これをもとに、フーガの大まかな設計図を書きます。

「嬉遊曲までワンパターンになると聴衆も飽きるからなぁ」
「嬉遊曲の小節数は中途半ばにしたほうが、聴衆にインパクトを与える効果が期待できるかも!」
とか
「この主題、4小節じゃ荘厳感が出ないなぁ GmとDの繰り返しを増やして5小節にしちゃえw」
とか
「あとはベースラインをはめ込んで、コードを決めて・・・」
「対位するフレーズをここにも・・・あ、ここにも載っけよう・・」

こうして完成したのが小フーガト短調だったのかもしれません(^m^;)
曲を作る、というより家を建てる感覚に近いものを感じます。

バッハはどうやってフーガを作曲したのか
私の最大の謎は残ったままです。

一曲ぐらいの分析では到底わかるはずもありません。

私のバッハ海の航海はまだまだ続きます

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音楽系クラシック

Posted by Yuki