【書簡集と写真集を読んでみた】 グレン・グールド入門 音楽編

音楽系クラシック

【グレングールド入門 音楽編】

前回のブログでカナダ人ピアニスト”グレングールド”に関する二冊の著書

みすず書房 「グレングールド書簡集」

ソニーマガジンズ 「グレングールド ア・ライフ・イン・ピクチャーズ」

を引用させていただいて、グレングールド入門と称して彼の来歴と私生活について雑感をブログにしました。

今回は彼の音楽についてのグレングールド入門です。

 

【録音技術へのこだわり~完璧を目指す~】

グレングールドは1950年代後半から1960年代にかけてコンサート活動よりも録音に重点を置くようになります。

そして1964年に事実上演奏活動を停止します。

その後はスタジオ録音に専念し、技術的な完璧さを求め細部にまでこだわった編集作業を行います。

その編集方法のひとつが「テープの切り貼り」と言われています。

 

[録音テープの切り貼り]

録音テープの切り貼り というとビーチボーイズのブライアン・ウィルソンが有名です。

ブライアンがスタジオに籠りテープの切り貼りで作曲を行い、未発表の「Smile」アルバムを制作していたというのは有名な話です。

そのテープの切り貼りをクラシックピアニストのグレングールドが早くから行っていたというのがちょっと驚きでした。

グレンには

”創造的な芸術家は、あちこちいじって完璧をめざすものである”

という主張があり、テープの切り貼りもそのためのひとつの手法だったのです。

 

【独自の解釈】

グレンの演奏は他には独自の解釈に基づいて演奏されることが多いです。

グレンは一つの曲を色々な解釈で何十テイクも録音し、その曲にあった演奏を極めていったそうです。

”曲が持つこれまでの解釈を一旦まっさらな状態にして新しく創造”していくのが彼のスタイルだったのです。

テンポを速くしたり遅くしたり、それどころか新しい音を付け加えたりと縦横無尽です。

ちなみに1962年レナード・バーンスタイン指揮の下ブラームスピアノコンチェルト一番はバーンスタインとの解釈の違い(グールドの超遅テンポが通る)が存在したまま演奏され批評家から容赦ない酷評を浴びせられました。

わたしがバッハのInventionのⅠを練習していた時、参考までにグレンの演奏を聴いたのです

その曲は楽譜とは全くの別物に仕上がっていて今までのクラシック感(とにかく楽譜通りに正確に弾け)が根底からひっくり返された気持ちになりました。

 

【ショパン・シューベルト・シューマンが嫌い】

というか19世紀前半に書かれたピアノ曲が嫌いだったようです。

(これらの曲は)進歩を遂げるピアノという楽器の能力を発揮させるものですが、これはまた甘ったるいほど感傷的でパーティー芸にみちています。

とまで言い切ってます。

一方でメンデルスゾーンは過小評価されているとしています。

 

【モーツァルトは嫌いなのか?】

世の中のモーツァルトファンから批難を浴び続けるグレンのモーツァルトピアノソナタ集

グレングールドに関する他の本では”モーツァルトを憎んでいた”とまで書かれています。

なぜそこまで捻じ曲げるのかというレベルなのだそうです。

モーツァルトのピアノはメロディーやフレーズを構成する音の間に装飾音がちりばめられているのが特徴です。

モーツァルトのころのピアノはダンパーがなく音を長く持続させることができません。

なのでメロディーの音と音の間をつなぐために装飾音、装飾フレーズで埋めていたわけです。

グレンはバッハのピアノ曲でこの”作業”をしているフシがあります。

今練習しているパルティータⅠのプレリュードでも楽譜にはない装飾音が所々あります。

ところがモーツァルトのピアノ曲ではすでにモーツァルト自身によってこの”作業”がなされています。

この”先にやられた感”がグレンにはあったものと思われます。

そのモーツァルトのピアノソナタの演奏は”なんとかしてモーツァルトの曲も支配してやる”感のあらわれなのでしょうか

モーツァルトのピアノソナタK330はグレンが演奏会で好んで弾いていた作品です。

二回録音してレコードになっています。

 

【まとめ 知的で緻密で内省的な音楽が好き】

グレングールドが好きな作曲家はバッハ、シェーンベルク、シュトラウスです。

シュトラウスに関してはわたしはほとんど知りませんので、グレンの音楽的興味に関して断言はできませんが、

  • バッハの対位法とフーガ、シェーンベルクの十二音技法といった音楽的複雑な構造を持ち
  • 感情の深みがあり
  • 知的探求心を満たす

ような音楽が好きということになります。

グレンは書簡の中で無人島で常に一人の作曲家の音楽しか聴いたり弾いたりできなくなったとすればバッハを選ぶと書いています。

その理由はバッハの音楽には感動があり、堅実であり、人間性があるからだそうです。

この二冊の書籍には他にも作曲家や演奏、録音技術に関する興味深いグレングールドの所見が書かれています。

機会がありましたら読んでみてください。

 

 

 

わたしはモーツァルト好きだったのですが、グレングールドのおかげですっかりバッハ好きになりました。

KORGのB2を購入して約一年

昨年(2023)末から本格的にバッハの曲を練習しています。

先ほどのInventionやゴルドベルク変奏曲のアリア、パルティータⅠのプレリュード、フーガの技法Ⅰなどです。

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Posted by Yuki