ブライアンの対位法 その2 ~God only knows~
前回からの続き
【神のみぞ知る】
「対位法」
そんなわたしがまずアナリーゼしたのは
アルバム「Pet Sounds」のB面一曲目の「God only knows」でした。
このアルバムの中で最も美しい曲です。
美しさではブライアンの全キャリアの中でも5本の指に入る曲でしょう。
コーラスワークも素晴らしく、
何よりラストのパートでカノン的対位法を演出しているのが特徴です。
最後はサビのメロディーをカノン的対位法でリピートさせながら
フェードアウトして終わります。
サビの4小節は
|A |E |F#m |E F# G|
というコード進行です。この後歌の二番に繋がります。
そして最後のリピート部では
|A |E |A |E |
というA、Eコード(ベースはG#)の繰り返しにして、
リピート&フェードアウトさせています。
どちらの4小節も同じメロディーが流れます。
実際にGod only knowsを実際にDAWで再現してみました。
DAWはStudio One 3です。
リピート&フェードアウト部では、微妙な写り方で申し訳ありませんが、対位法が展開されるパートの楽譜がでてきます。
単純なコード進行は対位法の自由度を上げます。
(このあたりの対位法の説明はこちら)
そのことによってリピート&フェードアウト部は
対位法で動くメロディーの裏でコーラス部(動画ではホルンとブラスパート)も対位法で動けるようになっています。
youtubeのメイキング動画等見ると、ブライアンはホルンの演奏にはかなり神経質になっています。
何度も録音し直しています。
ホルンに、人間のコーラスと同等のモノを求めていたためでしょう
原曲では、滑らかさがとても際立っています。
このホルンとコーラスの対話がリピート&フェードアウト部の聴きどころです。
「難しいリズム」
曲の雰囲気に反して、やたらテンポが早いです。
動画では原曲より若干遅めにしてます。
そしてリズムがとても繊細です。
DAWのピアノロール画面に、打ち込んでいくと、いかにもDTMで作成したという雰囲気になって、原曲のようにはなりません。
違う曲みたいになってしまいます。
ほとんどのパートは、わたしがリアルタイム録音で直接弾いたものです。
手直しはしましたが、微妙にベースに変なところがあります。
粗探しはご法度です(^m^;)
リズムパートはシャッフル、というか1/32拍子単位の部分が多いです。
ドラムス、ベース奏者のリズムの練習にいいかもしれません。
歌の二番が終わったところで、全パートがリズムを取るところが4小節でてきます。
ここもリアルタイムで録音してみました。
自分のリズム音痴ぶりが露呈してしまいましたw
(メトロノームは鳴らしていたのですが・・)
動画ではピアノロールからの打ち込みに変更しています。
この部分、メイキング動画を見ると、ブライアンも全パートに何度もやらせています。
【宗教的な音楽を目指して】
「God only knows」が収められているアルバム「Pet Sounds」は、ブライアンがビートルスの「Rubber Soul」に触発されて制作されたとされています。
ブライアンは「Smile」作成中に「Rubber Soul」を、”宗教的な音楽”と称していました。(@ディヴィッド・アンダール(注)談)
ジョン・レノンの作品、「ノルウェイの森」「ミッシェル」「イン・マイ・ライフ」はそんな感じがしますね。
”宗教的な音楽”を、自身のアルバムで表現するための自信作「God only knows」に、
(題名に”God”が使われているくらいですから・・)リピート&フェードアウト部のホルンとコーラスの対話は、”宗教的な効果”をもたらすのに十分貢献した、
と言えるのではないでしょうか。
(ブライアンはこの”宗教的な音楽”、”スピリチュアルなサウンド”をさらに追求すべく、シングル「Good Vibrations」、アルバム「Smile」の制作にのめり込んでいくことになります。)
注)ディヴィッド・アンダール:
1966年末頃からのブライアンの友人&マネージャー
元MGMレコード社員、フランク・ザッパ、ダニーハットンを手がける
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