「 Don’t Worry Baby 」

2018年7月30日音楽系

【フィル・スペクター】

1960年代ポップスファンの方なら、知らない人はいないというほどの人物がフィル・スペクター(ハーヴェイ・フィリップ・スペクター)です。

自身も参加したテディーベアーズで「To Know Him Is To Love Him 」(会ったとたんに一目惚れ)というミリオンセラーヒットを飛ばしました。(なんと高校時代です!)

その後、グループを解散。
ニューヨークでソングライターチームのリーバー&ストーラーのオフィスで働き、音楽プロデュースを学びます。
(リーバー&ストーラーはあの「スタンド・バイ・ミー」を制作しています。軽くエコーが入っています)

そして、プロデューサーのレスター・シルと共同で設立した「フィレスレコード」を舞台に、プロデューサーとして活躍した人。

というのがこの人のプロフィールのほとんどを占めます。

(「フィレス」とは二人のファーストネームの合成です)

ちなみに現在は刑務所の中だそうです・・・・

当時の肩書はあくまでも裏方であるプロデューサーです。

しかし

「ティーンエイジ・シンフォニー」というコンセプトを打ち出し

それをポップソングで実現できるようにアレンジャー(ジャック・ニッチェ)に最適なオーケストラスコアを書かせ、

エンジニア(ラリー・レヴィン)に「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれるサウンドを作り出させた

など、サウンドクリエイター&ミュージシャンとも呼べる仕事もこなしていました。
 

【ウォール・オブ・サウンド】

フィル・スペクターのサウンドは通称 「Wall Of Sound」”音の壁”と言われているサウンドです。

作り方は

    ・大編成のオーケストラ
    ・そのオーケストラの演奏を狭いスタジオ(ゴールドスタースタジオ)で一発録音
    ・モノラルミックス (楽器同士のかぶりは気にしない)
    ・出来上がった音の塊にさらにエコーをかける

というものです。
これで音の壁が完成します。

壁というより、学校の音楽室にあるような”分厚いカーテンを張った”という感じです。

ただ、サウンドのダイナミズムは失われていません。
たくみなアレンジと、念入りなセッションリハーサルによるものと思われます。

わたしが最も好きなウォール・オブ・サウンドは、フィレスレコードのガールズグループ「ロネッツ」の「Born To Be Together」です。

Youtubeで視聴可能です。

エコーの塊の向こう側から炸裂してくるストリングスセクション、ホーンセクション、ドラムス、パーカッションの迫力にただ圧倒されます。

 

【スペクターのフォロワー】

フィル・スペクターが「ウォール・オブ・サウンド」を引っさげて、アメリカ音楽業界に登場してきたとき、その時代のミュージシャン・聴衆に与えた衝撃は計り知れないものだったようです。

ま、今聴いてもかなりの衝撃はありますから

フィル・スペクターの影響を受けたミュージシャンの多さからも、その衝撃度は伺いしれます。

60年代のガールズ&ポップ・ミュージックにはスペクターのイミテーションがたくさんあります。

そしてエコーの量だったらスペクターにも負けないウォーカー・ブラザーズ
(「太陽はもう輝かない」は全英1位です)

フォーシーズンズのヴォーカルフランキー・ヴァリのソロ作「Can’t Take My Eyes Off You」(君の瞳に恋してる)もスペクターサウンドな感じがします。
フォーシーズンズとのヴァージョンはそうでもありません。

スペクターにプロデュースを依頼したビートルズのジョン・レノン

そして
初期のローリング・ストーンズ(注1)や
ブルース・スプリングスティーン(注2)にもスペクターの影が見え隠れします。

日本ではなんといっても大滝詠一さんですね。

そして・・・・The Beach Boysの
ブライアン・ウィルソンです。

ブライアンはプロデューサー、アレンジャー、エンジニアと1人3役をこなし、”1人フィレスレコード”といった感じです。

さらに奥様のマリリン・ウィルソンを起用して、「ハニーズ」というガールズグループも作っています。

そんなブライアンの、フィル・スペクターへのリスペクト作品と言われるのが、全米No.1ヒットとなった「I Get Around」のB面曲
「Don’t Worry Baby」です。

 

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【Don’t Worry Baby】

初めてこの曲を聴いた時、メロディーのドリーミー感、美しさにビックリしました。

ブライアンの青空に抜けるようなファルセットがとても気持ちいいのです。

ドラム・ソロで始まるイントロは、ロネッツのヒット曲「Be My Baby」からの引用と言われています。

A面の「I Get Around」より多少は音は厚くなっています。
ブライアン独自の音です。

Don’t Worry Babyのレコーディングはたった一日。
二日後にギターとヴォーカルがオーバーダブされた12テイクが、マスタートラックになっています。

この頃のブライアンは、神経をすり減らすほどの過密スケジュールに追われていました。

このタイトなスケジュールでは、
この最終テイクがブライアンの意図するサウンドであったのかどうか、余計なお世話ではありますが多少の疑問が残ります。

ファンとしては
もしフィル・スペクターがDon’t Worry Babyをプロデュースしていたらどうなるのか・・・・
セッションドラマーのハル・ブレインのドラミング、カスタネット、間奏にストリングスが入って、ベースラインはBe My Baby風・・・
などと下世話な想像をしてしまうわけです。

で、ついやってしまったのが
これ

DAWはStudio One 3 proです。
ハル・ブレインのドラムの特徴でもあるタムタムの音は作れませんでした。
間奏のストリングスのメロディーにはちょっとだけBe My Babyを入れてます(^m^;)

ブライアンのエゴは他の才能に対して、意識過剰になりすぎる点が困ったところです。

ビートルズに対しても、
フィル・スペクターに対してもです。

スペクター作品を一日に何度も聴くなど、2000年代に入ってもスペクターにはこだわりを持っていたようです。

注1)
初期のプロデューサーであるアンドリュー・ルーグ・オールダムが、フィル・スペクターのフォロワーです。
スペクター自身もセッションに参加したこともあったようです。
リズムセクションの処理の仕方にスペクター臭を感じます。

注2)
アルバム「Born To Run」ではブルース自身も
「フィル・スペクターのようなレコードを作りたかった」
と公言しています。
シングル「Born to run」はポップセンスも十分でカッコいいですよね。

「Born In The USA」は突き抜けた曲でしたけど、他の彼の作品を聴くと、メロディーにどことなく、60年代ポップセンスを感じる曲が多いような気がします。
最近、スプリングスティーンのライブYoutubeでよく見てます(*^^*)

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