ブライアンのスタジオワーク その2

2019年1月26日音楽系ブライアン・ウィルソン研究

その1”からの続き

【ブライアン・ウィルソンの場合】

[難聴だった右耳]

ブライアンは子供のころから右耳が酷い難聴で、ほとんど聞こえなかったといいます。
そのため、ステレオで音楽を聴く機会が少なかったと思われます。
そのため”音の良さ” ”音像の広がり”といったファクターは、無関心だった可能性があります。

ブライアンにとって音樂で重要なのは、曲のメロディー、構造であったのかもしれません。

ビーチボーイズのごく初期の作品にはステレオもありました。
しかしブライアンが本格的にプロデュースに関わってくると、ステレオの作品はなくなりすべてモノラル作品となります。

[モノラル]

プロデューサーのフィル・スペクターです。
彼はマルチトラックの時代になっても、オケはドラム、ベースのリズム・セクションからオーケストラまで、スタジオミュージシャンを一同に集めてレコーディングする一発録りを行っていました。

そしてブライアンも
「Pet Sounds」アルバムの「God only knows」やそのほかの楽曲のメイキング動画を見ると、ヴォーカルを除く全パートを、スタジオに集めての一発録りを行っていたようです。

このオケはステレオで録られていて、臨場感たっぷり。
音質、音像の広がりも素晴らしいです。
色々な楽器の音もクッキリ聴こえます。
このオケを1chにまとめてしまい、そしてヴォーカルパートを重ねてモノラルの作品にしたのです。

わたしのように、
ネットで、これらのメイキング動画やデジタルリマスターステレオ音源に触れてから、モノラルリマスターやもっと古い疑似ステレオのCDを聴いた人は、その情けない音質にがっかりしてしまうことは想像に難しくありません。

せっかくステレオ録音された素晴らしい音質のオケやヴォーカルパートが、一次元にまとめられてしまっているのですから。

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[テープの切り貼り]

ブライアンもテープの切り貼りは得意技だったようです。
特にビーチボーイズのアイデンティティであるコーラス&ハーモニーに関しては、収録後、メンバーのパートが気に入らず、1人で多重録音で仕上げることもあったようです。

しかしヴォーカル以外のオケを1chにしているため、その編集には限りがあります。

以前取り上げた「Good to my baby」という曲で、歌の最後のところでGメジャーからG#メジャーに転調するところがあります。
この部分は収録後、Gメジャーで終わるところをブライアンがテープの回転数を上げて、無理やりG#メジャーにしてくっつけたのではないかと、わたしは勘ぐっています。

[作曲]

ブライアンの場合、テープの切り貼りを、曲の編集よりも作曲に活かしたところが、新しいアイディアといえます。

自ら「フィーリング」と称した、短いフレーズの曲をいくつも作り、そのテープを切り貼りして一曲に仕上げる。
これが「Pet Sounds」以降の、非常に短い時期でしたがブライアンの作曲法でした。

2000年代に入り、その全容が明らかになってきた「Smile」アルバムには、この作曲法から生み出されたと思われる曲がたくさん見られます。

「Good vibrations」「Cabinessence」
「Surf’s up」「Do you like Worms」
「Heroes and Villains」
組曲である「The Elements 」
なとはその典型ですね。
もしかしたらソロ作に収められていた「Rio Grande」なども同じ系列かもしれません。
この中ではわたしは「Surf’s Up」が一番好きです。

【もし・・・・・・】

ブライアンの音樂、歴史をみてくると
「もし・・・・だったら・・・だったのに~」というフレーズは常につきまといます。

その思いはファンだったら誰もが思うことでしょう。

しかし完結しなかったことで、ずっとファンの心の中にひっかかる存在であり続けたのかもしれません。

それが50年以上経ったデジタル・ネット動画時代になって、60年代当時のポップスターの中で唯一といっていいほど再評価が進んだ原動力だったのだと思います。

 

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