【アトムレンズ】トリウムレンズの放射線を測定してみました【高額測定器】
前回購入したSuper Takumar 55mm F1.8についてです。
その後、ネットで色々調べている中で、ちょっと気になる情報がありました。
Super Takumar 55mm F1.8には前期型と後期型があります。
後期型は「酸化トリウム」を含有させたレンズが使われているとのことです。
前期型後期型の見分け方です。
後期型は「Super Takumar 1:1.8/55」の後にシリアルナンバーがあります。
前期型は「Super Takumar」の前にシリアルナンバーがあります。
【トリウムレンズ】
被写体は光を反射しているから肉眼で確認することができます。
その被写体に反射した光を集めてフィルム(感光紙)に焼き付けて写真となります。
その光を集めるのがレンズです。
レンズの屈折率を利用して光を集めているわけですね。
酸化トリウムを使うとレンズの屈折率の精度が上がるそうです。
さらに色収差のない画像が得られます。
酸化トリウム含有のLeicaズミクロン 50mm F2が、「空気までもが写る」と言われる描写力を実現して知られるようになりました。
ところがトリウムは放射性同位体(放射性物質)です。
そのため放射線を発します。
なのでアトム(原子)レンズともいわれます。
崩壊生成物からの放射線と作業員の内部被曝の懸念があって使用されなくなりました。
【放射線の測定について】
放射線という言葉を聞くと心中穏やかではいられません。
東日本大震災の原発事故でも放射線で大騒ぎになったのは記憶に新しいです。
ネットを検索すると過去にもトリウムレンズの放射線を測定したという記事があります。
結果はレンズを肌見放さずみたいな使い方をしなければ大丈夫というのが大方の意見です。
ところが心配性なわたし
実際この目で安全性を確認したくなりました。(ネタになるということもあります)
そこでタクマーレンズの放射線を実際に測定することにしました。
利用した機器はHORIBAの放射線測定器PA-1000です。
ゲルマニウム半導体検出器と思われます。
ゲルマニウム半導体検出器はエネルギー分解能が高く、特にγ線のスペクトル分析が正確です。
環境試料の核種測定に広く使われています。
放射線にはα線、β線、γ線、X線、中性子線があります。
α線、β線、γ線、X線には環境下で、以下のような性質があります。
環境省の放射線の基礎知識より
なぜγ線だけなのか、他の放射線は測定しなくていいいのか、というと
- 上の図のようにγ線がα線やβ線より浸透力がはるかに強い
- γ線スペクトルを測定することで容易に微量の放射性物質が定量可能となる
からです。
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【測定してみました】
放射線は、宇宙線のほかに、地球に存在している放射線物質などから自然発生した放射線など、ごく普通に自然発生しています。
この自然発生している放射線を、バックグラウンド放射線といいます。
このバックグラウンド放射線がリファレンスとなります。
ちなみに東京都のバックグラウンド放射線は0.028~0.079μSV/hです。
下の画像より、三朝温泉のバックグラウンド放射線が多いのは温泉に伴うラジウムの蓄積地の可能性があります。
さっそく測ってみました。
Super Takumarの後玉のレンズのほうが酸化トリウムの含有量が多いとのことです。
まず後玉のすぐ後ろ?を測定してみました。
測定器にビニール袋が被せてあるのはそのような指示があったためです。
1.343μSv/hと出ています
この時点でもう背筋に変な汗がw
ところがです。
後玉レンズから5cm、10cmと離れると放射線量が結構減衰します。
30cm以上離れるとバックグラウンド放射線量に紛れてしまい、バックグラウンド放射線と同じになることがわかりました。
5cm 0.295μSv/h
10cm 0.149μSv/h
30cm 0.058μSv/h
50cm 0.044μSv/h
これは前玉から50cm離れて測定しているの図
レンズの状態、色々な角度からの距離と測定値結果をまとめておきます。
0 | 5cm | 10 | 30 | 50 | ||
レンズ後玉 | 1.343 | 0.295 | 0.149 | 0.058 | 0.044 | |
レンズ前玉 | レンズキャップあり | 0.210 | 0.115 | 0.060 | ||
レンズキャップなし | 0.192 | 0.106 | 0.059 | |||
レンズ本体 横 | 0.350 | 0.158 | 0.066 | |||
レンズ後玉 | マウントアダプターあり | 0.547 | 0.200 | 0.058 | ||
E-P5の後ろ | マウントアダプターあり | 0.224 | 0.120 | 0.060 |
単位はμSv/h、レンズキャップは金属製です。
マウントアダプターの厚みは約2.5cmです。
オリンパスE-P5の厚さは約3.5cmです。
E-P5の後ろとはこういうことです。
ちなみに外に出て、色々な場所で放射線測定してみました。
0.06μSv/h前後が、私の地域のバックグラウンド放射線量のようです。
わかったことは
- 空気中で、数十mは飛ぶγ線が、数センチで減衰するということは、エネルギーの発生量が極端に小さいようです。トリウムの半減期140億年を証明している?
- レンズキャップの金属ではやっぱりγ線は減量できないです
- レンズの後玉から30~50cm以上の距離が安全性の決め手
ということでした。
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【まとめ 放射線の影響を受けない撮影パターンは?】
自治体では、放射線を出す汚染物に対して、除去などの対応をとります。
私のところの自治体では
学校・公園など | |
地上50cm | 0.23μSv/h |
地上5cm | 0.30μSv/h |
という目安があります。
これ以上の線量で除去対象となります。
この0.23~0.30μSv/hという値は以下の計算から導きだされています。
これを撮影パターンに当てはめて、一日に撮影できる時間を計算してみます。
今回の私のトリウムレンズの最大線量は、後玉レンズからの1.34μSv/hです。
そこにバックグラウンド線量0.06μSv/hを加えると1.4μSv/hとなります。
この線量で、年間の被ばく線量を1mSv/hに抑えるには、
約2時間/1日
これが一日の撮影時間の限度となります。
一週間では14時間
つまり週末一日だけ、私のSuper Takumarで撮影するというパターンなら特に問題はないという計算になります。
しかもマウントアダプターを介して、今回のSuper Takumarを付けたE-P5で実際に撮影するという状況なら、最大線量は0.350μSv/h(レンズ真横の測定値)に低下すると予想されます。
(今回測定していて、トリウムレンズとの距離をとってくれるマウントアダプターが微妙ながらもイイ働きをしてるなぁと思いました)
ちなみにロンドンとローマのバックグラウンド線量は0.25μSv/hだそうです。
私は、
週に1回程度の撮影なら、人物に対する影響は気にする必要はないのでは、と思いました。
もちろん保管している時は、50cm以上の距離を必ず保つことが条件です。
いずれも測定値が正確な場合、というか正しいでしょう
なにしろ十ン万・・・
とはいえ、一回の使用でも放射線がどうしても気になる、という方もいらっしゃると思うのでそれは個々の判断でいいと思います。
一方、放射線がレンズに及ぼす影響は大きいかもしれません。
放射線の影響でレンズが黄色に変色しています。
得られる映像に、多少なりとも影響が出ることも予想されます。
酸化トリウムを使ったオールドレンズは、ほとんどが黄色に変色しているので見た目でわかります。
私は、「フィルムみたいな」描写だけでなく、このような素敵な描写もしてくれるTakumarレンズはずっと使っていきたいと思ってます。
マニュアルフォーカスも楽しいです。
保管は、百均のタッパーに入れて(百均の湿度計・シリカゲル適量も)、私から、そして他のレンズ、カメラからも距離をおいて”隔離”していますw
以下はスーパータクマーの作例です。
ディスカッション
コメント一覧
余計なお世話ながら、画像を見るかぎり放射線の測り方が間違っているようです。
申し訳ありません
今回の測定器を用いてまた測定する機会がありましたら、測定方法をよく調べて測定したいと思います