【フィル・スペクター】Be My Baby の衝撃 【初音ミクV4X】
【フィル・スペクター】
[死去]
2021年1月16日、アメリカポップス史上最も偉大な音楽プロデューサーであったフィル・スペクター氏が死去しました。
81歳でした。
例のウイルスによる合併症が原因だそうです。
音楽活動はもう無理とは思っていましたが、死去となるとやっぱり悲しいです。
人が亡くなるだけの悲しさではなく、あれだけの功績を残した人が、
薬漬け→殺人→刑務所→例のウイルスで病院で最後
という絵に書いたような破滅具合に悲しくなるのでした。
[ウォール・オブ・サウンド]
フィルの作り出す音楽には”音”がたくさん詰まっています。
その”音”が、スピーカーから塊となって、壁のように圧力を持って出てくるので、彼の制作する音楽はひとくくりに「ウォール・オブ・サウンド」と称されています。
この「ウォール・オブ・サウンド」によって、フィルは一時代を築きました。
1960年代の音楽ですが、Youtubeには、フィルが制作した楽曲がたくさんアップされています。
なので、「ウォール・オブ・サウンド」を手軽に体験できます。
「ウォール・オブ・サウンド」の”凄み”が感じられるオススメ作品として
- 「Walking in the rain」 ロネッツ
- 「Born to be together」ロネッツ
- 「Here I sit」 ロネッツ
- 「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」 ライチャス・ブラザース(Mono推奨)
- 「River Deep-Mountain High」 アイク&ティナ・ターナー
などを挙げます。
これらの作品はフィルの短い活動期の中期以降の作品がほとんどです。
初期の頃の作品にくらべて、特にサウンドクオリティが格段に上がっています。
そしてこれらの傑作群誕生の礎となった作品がロネッツの「Be My Baby」です。
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【Be My Baby の衝撃】
[ロックンロールブームの消滅 1950年代末]
1950年代後半、アメリカのポップシーンはロックンロール一色でした。
エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、バディー・ホリー、リトル・リチャードといった名だたるロックンローラー達が大活躍した時代です。
ところが、1958ー59年、
- エルヴィスは米陸軍に入隊、
- バディー・ホリーは飛行機事故で死去、
- リトル・リチャードは飛行機事故に合ったものの、無事生還。しかしその後神学校に入学
- チャック・ベリーは裁判沙汰で刑務所へ
と、いきなりロックンロールブームは消滅してしまいました。
チャック・ベリーの収監に関して、根底に人種差別があったとされています。
[平穏なアメリカンポップスの時代 1960年代初頭]
1960年代初頭、アメリカの音楽界は内容的に停滞期にありました。
1950年代後半のロックンロール熱の反動もあったのかもしれません。
ポール・アンカ、ニール・セダカ、コニー・フランシス、パット・ブーンといった人たちが、穏やかで甘く明るいポップスを歌っていました。
1961年にヒットしたトーケンズの「ライオンは寝ている」などは、アメリカの民族音楽のように聴こえますw
これら1960年代初頭の音楽に触れると、あまりの隔世感、違和感にびっくりしてしまいます。
私のように、ビートルズやローリング・ストーンズ、ビーチボーイズ、ドアーズから、1960年代のアメリカのポップ音楽に興味を持って、この当時の音楽に触れた方なら、誰もが抱く感想と思われます。
この民族音楽wの時代に、ビート、分厚い音、ガールズグループで乗り込んできたのがフィル・スペクターでした。
そしてここから本当の1960年代の音楽が始まったのではないでしょうか。
[「Be My Baby」の秘密]
「Be My Baby」以前にも、自身のグループ”クリスタルズ”でヒットを飛ばしていたフィル・スペクター。
ただ、クリスタルズの「Then He Kissed Me」を聴いてみても、さほど心に響くものがありません。
曲自体はポップでとてもいい曲ですが。
ロネッツの「Be My Baby」になって何が違うのかというと、エコーの掛け方です。
「ウォール・オブ・サウンド」の肝は、エコーにあります。
このエコーを曲全体にかけているように聴こえてしまうのが、「Then He Kissed Me」です。
エコー頼りの「ウォール・オブ・サウンド」のようです。
そして、各パートごとに薄めのエコーをかけて、音の分厚さで「ウォール・オブ・サウンド」としているのが「Be My Baby」です。
もしかしたら「Be My Baby」から3チャンネルトラックが導入され、各パートを弄れるようになったのかもしれません。
エコーが薄めなぶん、ドラム、ロニー・スペクターのリードヴォーカルが、とてもダイナミックに聴こえてきます。
全面に飛び出してきます。
冒頭のドラムの「だーん・だ・た・バーン」wのリズムとダイナミズム溢れるサウンド。
これは当時の聴衆には、かなり衝撃的だったのではないでしょうか。
ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンは、このドラムサウンドへのオマージュとして、佳曲「Don’t Worry Baby」を制作しています。
1963年にリリースされた「Be My Baby」は、全米2位の大ヒットになりました。
「Be My Baby」以後、このダイナミズムさを失わないように、さらにエコーを増大させることで「ウォール・オブ・サウンド」は完成されます。
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【「Be My Baby」のDTM】
フィル・スペクターのアルバム「A Christmas Gift For You From Phil Spector」の中の「Frosty The Snowman」という曲は、「Be My Baby」のアレンジが使われています。
三年前、私は無謀にも「Frosty The Snowman」をDTMにしました。
これになんとか「ウォール・オブ・サウンド」の”ウォール”感を出そうと、今回、アコースティックギターを入れて「Be My Baby」をDTMにしてみました。
DAW Studio one 3 初音ミクV4X
[Be My Babyのコード]
アコギを用いることで、ささやかながらですが厚み感が出たように思います。
やっぱり弦の響きがあると違います。
コードを”ジャラーン”と鳴らしたとき、厚みのある弦の響きは、ギターではローポジション、さらにオープン弦の音のほうが得られやすいです。
アコースティックギターはスチール弦です。
なので、オクターブ上の高音が入ってくると、シャカシャカ音と金属的な音が目立って、軽い音になりがちです。
実はこの「Be My Baby」、F#m、B、さらにG#、C#と、初心者が、ローボジションでキレイな音で弾くには厳しいコードがたくさん出てきます。(^m^;)
なので、G#C#のコードが続くBパートのフレーズは、カポタストを1フレットにつけて、G、Cコードにして弾いてパンチイン録音しています。
【まとめ DTMのギターサウンド】
DTMのデジタルサウンドに彩りを添えるのはエレキギター・アコースティックギターの弦の音なんだなぁと感じています。
スペクターも、「ウォール・オブ・サウンド」ではアコギサウンドを重要視していたそうです。
3~4人のギターミュージシャンが奏でる音が、それらしく混ざり合って、さらに残響音がエコーらしく聞こえるまで繰り返し練習させたそうです。
となれば、わたしもせめて2~3トラックはアコギの音を録音すべきだったでしょうか(^m^;)
もしくはクラシックギターをまぜるとか
次の課題にしたいと思います。
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