まるで地中海式気候のような

2019年1月16日日常の文系・雑記エッセイ

【異邦人】

アルベール・カミュの代表作「異邦人」の
第一部2章で次のようなシーンが出てきます。

これから何をしようかと考え、泳ぎに行くことに決めた。
電車に乗って港の海水浴場へ行った。
そこで入江に飛び込んだ。
~中略~
われわれは、半ば眠ったように、ブイの上に長いことじっとしていた。
太陽があまり強くなると、彼女は飛び込んだ。
私はそれに続いた。
~中略~
私の部屋は、この場末町の大通りに面している。
午後は晴れていた。しかし、歩道はねばねばしていた。
~中略~
自分で料理をし、立ったままで食べた。
また窓のところで煙草をくゆらしたいと思ったが、空気が冷えていて、
私は少し寒かった。

舞台はアルジェリア
主人公ムルソーが、木曜日、金曜日にマランゴまで出かけてムルソーのママンのお葬式に出席した後、アルジェに帰ってきた週末の生活を描いています。

最後の食事のシーンは日曜日の夕食時です。

これを見ると
日中は海水浴が楽しめて、
道路のアスファルトが柔らかくなるほど太陽の照りつけが強烈で暑いのですが、
夜になると寒さを覚えるほど冷え込んでいることがわかります。

夏季シーズンの6~8月にとても乾燥する、地中海式の典型的な気候が見て取れます。

【地中海世界のイメージ】

この「異邦人」は現代社会の思想、常識、価値観に与しない主人公ムルソーの物語です。

この物語の本質は、彼が「太陽のせい」で殺人を犯した後、彼と司法と司祭との闘いが描かれている第二部にあります。

でもわたしは「アルジェの永遠の夏」、つまり地中海式気候の描写が散りばめられている第一部にも、強く惹かれてしまいます。

マティス、シャガール、サルボといった、地中海世界に魅せられた芸術家たちのように・・・・。

とはいえわたしが地中海世界に感じることは

  • オリーブ、葡萄、ハーブ、柑橘系といった農産物
  • 石灰で塗られた白い家々
  • コートダジュールやコスタ・デル・ソルといった高級リゾート

といった実に観光的、世俗的なところになるのですが・・・(汗)

これらのコンテンツは乾燥した気候に依るところが大きいです。

ちなみに同じ地中海式気候のイタリア・ローマの夏季6~8月の平年降水量は20~30mm台です。

乾燥した冬の晴天が続く東京の1月の平年降水量が45mmですのでその降水量の少なさ、乾燥具合がわかります。
 

【まるで地中海式気候のような】

さてこのような気候は温暖湿潤気候の日本では得難いものなのです。

が、今年の6月はちょっと違っていました。

6月7日(2017年)に四国から関東甲信まで梅雨入りとなりました。

しかし首都圏では、その後も雨の日は2日ほどしかなく、晴れ、くもりの日がほとんど。
晴れの日ともなると、最高気温が30度を超える日もあり、まるで夏のような陽気になることもありました。

普通、梅雨の時期は、晴れても湿度が高いので夏のような蒸し蒸しした晴天になります。
熱中症とかにも気をつけなくてはいけません。

しかし今年の6月の特徴は湿度が低く、晴れても梅雨の空気とは思えない、初夏の頃のカラッとした陽気そのままな空気感がありました。

今年の5月は雨が多かったから余計そう感じたのかもしれません。

東京での過去10年の5~7月の相対湿度(%)は以下のようになっています。

5月 6月 7月
2007 58% 66% 74%
2008 65 72 71
2009 64 72 72
2010 60 67 70
2011 63 71 67
2012 65 73 75
2013 61 74 73
2014 62 75 74
2015 62 75 80
2016 66 75 80
2017 72 67

相対湿度 その湿度における飽和水蒸気量に対するその時の空気中の
     水蒸気量の比率

2017年は6月19日までの数値ですが、数値上でも例年と比べて湿度が低いことがわかります。
(5月が雨が多かった)

さらに大陸からの涼しい空気に覆われ(移動性高気圧)夜は15度近いの日も多かったのです。

最高気温と最低気温の差が10度近い日(東京)を挙げます。

最高気温 最低気温
2 29 19
3 27 16
4 27 17
5 26 16
6 24 15
10 31 19
14 25 15
16 29 18
17 28 18
19 31 17
20 28 17

昼間の日射は暑いけれど、日陰に入ればとても清々しく、夜は毛布も必要なくらいに冷えている・・・・と、日本に居ながらまるでモナコやニースにいるかのような気分に浸れた6月前半だった
ということが言えましょう(笑)

昨日(6月22日)からは関東地方も本格的な梅雨に入ったようです。

 

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