アメリカの好景気 ”帝国”の18年間4
【新しい金融商品の出現】
メインフレームと呼ばれる、
大企業の基幹業務や機密情報を処理する大型汎用コンピューターは1950年代から登場していました。
メインフレームという呼称はIBMが名付けたもので、IBM701からそう呼ばれています。
メインフレームは1970年代末に超LSIを搭載し性能が大幅に向上
1980年代に全盛期を迎えます。
このメインフレームの飛躍的発展は、ウォールストリートに新しいステージをもたらしました。
数学や工学系の専門家が大量にウォールストリートに流入。
金融工学という分野が生まれました。
コンピュータートレーディングを使って、株価や為替、金利のごく僅かな変化を利用した、新しい投資技術や金融商品が生まれるようになったのが1980年代だったのです。
【デリバティブ商品】
デリバティブ商品とは、
先物取引、オプション取引、スワップ取引といわれる金融(債権、証券等)派生商品群の総称です。
いずれも価格変動モデルを株式、債権、外国為替といった原資産価格と
高度な数式(ブラック・ショールズの偏微分方程式)から導き、将来の現在価値を決定していることが共通点です。
取引を始める時に証拠金が必要ですが、少ない投資金額で大きな取引ができること(レバレッジ効果)が特徴です。
ハイリスク・ハイリターンを伴う取引ですが、もともとは市場で起こりうるリスクを相殺できるように設計されたものです。
またこの頃、住宅ローン債権から派生した金融商品も生まれました。
それがCMOです。
住宅融資債権を証券化したモーゲージ・パススルー証券のモーゲージに対する権利をランク分けして、投資家がローリスクもしくはハイリスクの商品を選べることを可能にした金融商品です。
1983年頃の初期のCMOの元利返済シナリオをモデル化するのでさえ、メインフレームをつかって週末いっぱいかかったそうです。
このCMOは年を追うごとに複雑化することになります。
このようにメインフレームの発達によって、
原資産から住宅ローン債権まで使えるものがあればなんでも、そこから金融商品を派生させて、
しかもより複雑な仕組みを持ち、
投資家のニーズを満足させる、
金融商品に仕立て上げることが可能になりました。
これらの戦略が大規模になり、さらに洗練され巨大な利益をもたらし、アメリカの金融帝国としての地位を押し上げていくことになったのです。
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【バブルへの道】
しかし新しい技術や戦略には重大な欠陥が潜んでいることも多いです。
ウォールストリートが制御不能に陥ったときには、バブルが生じる要素も孕んでいます。
1920年代の狂瀾の時代を鑑みる必要もないでしょう。
先程のCMOは
1994年、FRBが意表をついてフェデラルファンドレードを0.5%上げたとき、モデルの算出に混乱をきたしました。
CMO市場全体が止まってしまう事態に陥りました。
1982年から1999年まで、金融バブルとその破滅のサイクルは、幾度となくありました。
いずれ2008年のサブプライム住宅ローン危機に繋がる道です。
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